喫煙は、多くの健康問題を引き起こす原因の一つとして広く知られています。しかし、口の健康にも悪い影響を及ぼすことはご存知ですか?なかでも歯周病と喫煙の関係は非常に深刻であり、喫煙者は非喫煙者に比べて歯周病のリスクが大幅に増加することが分かっています。今回は、歯周病と喫煙の関係、歯周病以外にタバコが与える影響、健康な歯を守るための禁煙と歯周病対策について詳しく解説します。
■歯周病と喫煙の関係とは?
歯周病は、歯を支える組織である歯肉や骨が炎症を起こして溶ける病気です。治療をせずに放置すると最終的に歯が抜け落ちる、注意すべき病気のひとつです。歯周病の原因は主に歯垢(プラーク)と呼ばれる細菌の塊ですが、喫煙は歯周病をさらに悪化させることが分かっています。
・喫煙は歯周病を悪化させる
喫煙は、身体の免疫機能を低下させて細菌に対する抵抗力を弱めるため、歯肉や骨の炎症を促進して歯周病を悪化させます。また、タバコに含まれる成分には歯肉や骨への血流を阻害する作用があるため、歯を支える組織の新陳代謝に必要な酸素や栄養が不足するのも問題です。これにより、歯周病の悪化が促進されるだけでなく、歯肉や骨の回復が阻害されてしまうため、歯周病の治りも悪くなります。
・喫煙者の歯周病リスクは4倍以上
ある研究によれば、喫煙者は喫煙経験がない人と比べて歯周病にかかるリスクが4倍も高いと報告されています。(※)1日の喫煙本数が増えるほど歯周病リスクは増加するとも報告されており、1日あたり31本以上喫煙する人は5.88倍もの値となっています。喫煙者は非喫煙者と比べて、歯周病で歯を失うリスクが高いと言えるでしょう。
■歯周病を悪化させる物質について
タバコには、数百種類もの化学物質が含まれており、その中には歯周病を悪化させる物質が多数存在します。タバコに含まれる主要な有害物質がどのようにして歯周病のリスクを高めるかについて詳しく見ていきましょう。
・ニコチン
ニコチンは、タバコに含まれる主要な成分です。依存性のある物質として広く知られています。ニコチンは血管を収縮させ、歯肉や歯を支える骨への血流を低下させる働きを持っています。これにより、歯肉が酸素や栄養を十分に受け取れなくなり、歯周病が進行しやすくなるのです。また、ニコチンの影響で血流が悪化すると、炎症を抑える免疫細胞が十分に働けなくなり、歯周病の原因となる細菌が増殖して歯周病が悪化します。
・タール
タバコに含まれるタールは粘性が高いため、歯への歯垢の付着を促して歯周病のリスクを高めます。
・一酸化炭素
タバコを吸うことで体内に取り込まれる一酸化炭素は、赤血球と結びついて酸素の運搬能力を低下させます。これにより、歯肉や歯を支える骨に酸素が行き届かなくなり、組織の回復力が低下して歯周病が進行します。また、一酸化炭素は血行不良を引き起こして免疫機能を低下させる作用もあるため、免疫機能の低下による歯周病の悪化も促します。
・その他の有害物質
タバコには、ニコチン、タール、一酸化炭素以外にも、ホルムアルデヒド、ベンゼン、アセトアルデヒドなどの有害化学物質が含まれています。これらの物質も口の組織にダメージを与えて免疫機能を低下させる作用があり、歯周病の進行を加速させます。
■歯周病だけではない?タバコがもたらす悪影響
タバコの影響は、歯周病だけではありません。歯周病以外の口の健康や全身の健康にも重大な悪影響を及ぼす可能性があります。歯周病以外でタバコが口と全身に与える影響を4つご紹介します。
・口腔・咽頭がんのリスク増加
タバコは、口腔がんや咽頭がんのリスクを著しく高める要因となります。喫煙者は非喫煙者に比べて、男性で2.4倍、女性で2.5倍も口腔・咽頭がんが発生するリスクが高いという研究結果も出ています。口腔がんや咽頭がんは、自覚症状が早期発見が難しい病気です。治療のために舌や顎の骨を取り除く必要がある場合は、術後の食事や会話、見た目にも大きな影響を与えます。口腔がんや咽頭がんのリスクを減らすためにも、喫煙は控えた方がいいでしょう。
・口臭が発生しやすくなる
タバコの臭いは歯や口の粘膜に付着して残るため、それが口臭になることがあります。また、タバコの成分が口の乾燥を引き起こすため、口内の臭い成分が揮発して口臭を発生させたり、臭いを強めたりする場合もあります。
・虫歯のリスク増加
タバコを吸うと、虫歯のリスクが高まります。虫歯とは、歯垢に含まれる細菌が酸を作り出し、歯を溶かす病気です。人間は唾液という天然の虫歯予防システムを持っており、虫歯の原因となる歯垢を洗い流したり、酸を中和したりして歯が溶けるのを防止することができます。しかし、タバコを吸うと口が乾燥してしまうため、唾液の虫歯予防効果が発揮できなくなり、虫歯のリスクが高くなります。
・骨粗しょう症のリスク増加
タバコの有害物質は、全身の骨密度を低下させる骨粗しょう症のリスクも高めます。タバコに含まれる有害物質が、骨の新陳代謝や栄養供給に悪影響を及ぼすことで、骨が脆くなるのです。
■健康な歯を守るための禁煙と歯周病対策
喫煙者が歯周病を予防して健康な歯を守るために効果的な対策は、禁煙と口の衛生管理です。歯周病から歯を守るためのポイントを解説します。
・禁煙をする
禁煙による歯周病改善の効果は絶大です。まず、禁煙から数週間ほどで歯肉の血流が改善し、歯周病の症状が軽減されることが報告されています。また、口の免疫機能が回復するため、歯周病の治療がより効果的に進むようになります。他にも、喫煙によって増加する口腔がんや口臭のリスクが低減して、全身の健康状態の向上も期待できるでしょう。
・口の衛生管理を徹底する
歯周病の原因は、歯についた歯垢や歯石です。禁煙は歯周病改善に大きな効果を発揮しますが、口の衛生管理が不十分で歯垢や歯石がついている状態では、禁煙をしても歯周病を改善することはできません。禁煙だけでなく、毎日の歯磨きと定期的な歯のクリーニングもしっかりと行うようにしましょう。
■坂戸市で歯周病治療を行うなら、増野歯科医院へ
喫煙は歯周病の進行を加速させ、全身の健康にも悪影響を与えます。タバコに含まれる有害物質が歯肉や骨に深刻なダメージを与え、歯周病のリスクを大幅に高めてしまうためです。しかし、禁煙、毎日の歯磨き、定期的な歯のクリーニングを習慣化することで、歯周病を予防し、口と全身の健康を守ることができます。今日からでも禁煙を始め、歯周病予防に取り組んでいきましょう。
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